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原材料工程

金銀糸・箔

 

布に荘厳で豪奢な装飾効果を与える最も有効な手段として、金糸は宝石とともに古代から重要な役割を担ってきました。

金糸は紀元前に既に存在したと考えられます。

石に細い穴を開け、その穴に金を溶かして流し込んで糸状にしたとも、金を板状に打ち延ばし針金状に切断したとも聞きます。

日本に遺存する物を挙げれば、法隆寺献納宝物「忍冬文繍残片」(七世紀)、正倉院御物中の「金糸刺繡入り羅幡」(八世紀)では、撚箔糸が用いられています。また正倉院宝物の綴織(八世紀)のひとつには裁断した箔をそのままの状態で用いる平金糸が織込まれていますが、金銀糸・平箔がいつ頃から製造される様になったかを知る確かな資料もありません。

現在、西陣では漆などで金箔を和紙に貼り付け糸状に切ったものを「箔」、糸を芯に金箔などを巻きつけたものを「金糸」と呼びます。

芯に箔を巻きつけるのだから、まず箔の作り方の説明からになります。

土台は和紙です。主に楮(こうぞ)ではなく紙幣と同じ三俣(みつまた)です。和紙の上に漆を塗り適度に乾いたら1/10,000mmの薄い箔を竹製のピンセットで慎重に貼っていきます。貼り直しが効かないので大変な技です。近くを人が通るだけで空気が動き箔に皺ができては箔そのものが失敗になるのです。

箔を貼った和紙は湿度の高い部屋で一昼夜から二昼夜寝かせます。漆は湿気を吸って硬化する特性があるためです。

これを織り込むために裁断します。通常、曲尺(かねじゃく)1寸につき45〜200本に裁断しますが、一般的には90〜100本で1本あたり0.3mmとシャーペンの芯より細いのです。

金箔銀箔が主ですが、着色したものは色箔と呼んでいます。

この箔を撚糸機で芯の周りに巻きつけたものを金糸・銀糸と呼びます。

 

 

和紙に箔を貼る以外にも透明フィルムに金銀粉を静電気を起こし片面に「蒸着」させ、透明フィルム越に両面箔に見せる方法もあります。

本金の蒸着箔は金の純度は極めて高いのですが、使用量は極めて少なく透明感があります。ご存知ないと思いますが、本金の蒸着箔越に向こうを見ると何故か緑がかるので面白いです。

この蒸着箔はとても優れた技術です。

現代のクルマはプライバシーガラスと言って車内が見えにくくしてありますが、当初は窓ガラスは透明のものしかなく、スモークフィルムという黒っぽい色のフィルムを貼っていました。スモークフィルムの技術こそ、西陣織の蒸着箔の技術だったのです。

 

世に「くだらない」という言葉がありますが、逆に「くだるもの」ってあるでしょうか?

それは「下りもの」というのが正しくて、京の名品や伝統工芸品を江戸のお偉いお侍に差し出したことからそう呼ばれるようになり、京以外の物は「品質の悪い下らないもの」と言うのが語源です。現代は天皇様は東京にいらっしゃるので交通機関の東京発は総て「下り」と呼ぶのでお分かりになりますよね。

蒸着箔の技術って「下りもの」だったのです。

 

 

 

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