梅雨晴れの一日、西陣絣の葛西さんから連絡をいただいた。
智恵光院から俳優・佐々木蔵之介さんのご実家・佐々木酒造さんを東に入ったところです。
趣のある路地の奥が工房です。
西陣の絣(かすり)はお召(おめし)の着物から始まり、その後、帯に広まりましたが、現代では希少な織物です。
一般に西陣織の絣は染料で絣染めするための「くくり」という作業と、経糸(たていと)を思い通りの染模様に創り出す「はしご」という作業の2つの行程により「経絣(たてかすり)」に変化をもたらす工夫をしていきます。
男巻台(おまきだい)の模型です。梯子のある機械は「梯子男巻台」と呼ばれています。
①と②は「太鼓」と呼びます。
③は「前筬(まえおさ)」
④は「ロール」
⑤は「梯子」
⑥は「後筬(あとおさ)」
⑦は「千切(ちきり)」です。
経糸というものは恐ろしく張度を強くしなければ経糸を上下に口を開けて緯糸(西陣ではヨコイトではなく「ぬきいと」と呼びます)をその間に通さなくてはいけないので、緯を通す開口をしっかり開けておくためと、織り上がり後のシャリ感を出すためにかなりの張度が必要になるのです。
現代はモーターで巻き上げますが、昔は人力で巻き上げる男仕事だったのでこの名がついたのだと思います。
男巻台に掛ける前に一度先に整経してあります。
①の「太鼓」部分では染めは単に横段でしかありません。
⑤の「梯子」を通る時、絣文様を創り出します。
⑦の「千切」に巻き取れば、織機に掛けて織れる状態になります。
絣染の一般的な工程のうち、最初が「くくり」と言いました。
「巻紙」というプラスティック素材の紙を絹糸に巻きつけ染料が染まらないようにします。
紙を解けばこのような染め上がりになります。
巻紙の無い染まった部分の中を割って覗くと微妙に染まってない部分があり、これが経絣にしたとき「味」になります。
これが一般的な説明になるのですが、
今回 私どもの依頼した経絣はより複雑で「巻紙」を使用せず、葛西さんが染め工場に直接出向き、経の糸数にまとめた絹糸に直接 刷毛で染料を染めていただいております。
だからより複雑な染めの絣文様が染め上がっているのです。
手前に見える金属の横棒の積み重ねが「梯子」と呼ばれるものです。この部分で絣文様を形成し手前の「筬」で経糸を均一に巻き取るのです。