なぜか谷崎潤一郎の「細雪」がある。昭和21年発行だ。
谷崎は京都の花見のとっておきは平安神宮の紅枝垂と言う。
当時、円山公園の初代桜が老化で色褪せたからだ。
小説で蒔岡三姉妹は例年の花見の最後に平安神宮を訪れた。
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鯛でも明石鯛でなければ旨がらない幸子は、
花も京都の花でなければ見たやうな気がしないのであった。
あの、神門を這入って大極殿を正面に見、西の廻廊から神苑に第一歩を踏み入れた所にある数株の紅枝垂、
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今年も同じやうな思ひで門をくゞつた彼女達は、
忽ち夕空に広がってゐる紅の雲を仰ぎ見ると、
皆が一様に、「あー」と感嘆の声を放った。
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この一瞬の喜びこそ、
去年の春が暮れて以来一年に亘つて待ちつゞけてゐたものなのである。
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谷崎潤一郎氏はこの神苑の紅枝垂の株を頂きご自分の庭に植えました。
実は我が家にも神苑のじゃないけれど、同じ紅枝垂が咲き誇っています。
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